駄目な大人のおすすめ本棚

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花よりも花の如く

 堂々の完結! 24巻。圧巻。

 言葉は色々あれど、長かった長編の完結です。

 いや、ゴルゴやら亀有やらと比べたら格段に平凡な巻数にはなりますが、読むとなると、なかなかに時間が溶けます。もうね、韓流ドラマ一気観なみに時間が溶けます。

 一気に読んでも1巻にかかる時間がね、今時の漫画ではなかなかない程に必要だった。だって、めちゃくちゃ丁寧に描き込んでるんだもん。絵だけじゃなく、世界観やら人間関係!

 これぞ、伝統芸能の能を舞台に繰り広げられる人間模様!

 ……って言ったら、何だか韓流ドラマにありがちなドロドロな愛憎劇(という私の偏見)を想像するかもだけど、主人公の能楽師・憲人が浮世離れしていて(と私は感じた)、さらっとした人間模様なんだよな。いや、何も考えてないんじゃなく、考え過ぎててちょくちょく斜め上になる感じ?

 そもそも、憲人の家の特殊な家族構成からして、平々凡々な家庭で育った身としては、それだけでドラマ。

 一般家庭から見れば、充分能楽師の家系でありながら、自身は能楽師の家ではないという疎外感を常に持ち、養子に出された弟に対する申し訳無さと自分が出されずにすんだという安堵という二面性を常に頭の片隅に持って生きている憲人の人間性の複雑さ。

 かと思えば、自分から面倒事に足を突っ込み、結果、解決はするけれど、大切にしたい人達をおいてきぼりにするという鈍い一面をも持つ。

 あたかも能の面をいくつもかぶっているかのごとく、な主人公。あ、一瞬、ガラスの仮面を思い出しちゃったけど、これは仮面違いだな。脱線。

 そしてすごいのが、掲載した年月。24年って。

 虚と実の混じり合った作品だった為か、9.11事件やら、当時、社会問題となってきていたストーカー等もストーリーに組み込まれているのも、憲人がより身近に感じる。これは作者が、能楽を遠い伝統芸能ではなく、生きた人間が行っているものと読者に伝える為のレトリックの一種でなはいかと、勝手に深読みしてしまう。

 実際、能に限らず、伝統芸能は、歴史として脈々とと繋がってきている訳だから、実際の出来事があって然るべきかもしれない。

 でもって、最終巻。広げまくった風呂敷を華麗に畳みまくる回収をしてみせてくれました。

 そして、憲人の能楽師としての成長もさることながら、人間としての成長が著しい最終巻!

 是非とも、1巻から24巻まで、一気に読んでいただきたい作品です。

 

花よりも花の如く
漫画:成田美名子
出版社:白泉社
雑誌:花とゆめコミックス/メロディ